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夜歩く



横溝正史先生の描く陰惨とした日本の美学

君は見果てぬ夢を見て、いつか迷った袋小路。
うまい話があるじゃなし、金のなる木のあるじゃなし。

と、この語りは筋肉少女帯の『孤島の鬼』からの引用であって、『夜歩く』ではないのだが、好きな一文でもあるし、この作品に漂うテーマにもきっと合ってるのでとりあえず載せておこう。

夜歩く』は横溝正史先生の著作で、金田一耕助シリーズのひと作品にあたる。
横溝先生の作品と言えば、日本の古い文化、風習にまつわる暗い部分を描き出した作風が周知の事実で、まだ多くの作品を読んではいない自分にも、その文体の美しさに圧倒されるばかりである。
以前に『獄門島』を読み、それが一応は横溝先生への入門となったわけだが――実は獄門島ではあまり横溝作品の肝とも言える部分が、あまり実感できなかった。
というのも、僕は陸育ちだからである。
生まれてこの方、海に隣接した地域などでの生活なんて味わったことがなかったのだ。
獄門島は文字通り「島」が舞台であって、海が情景の主役だった。
しかし、海の魅力というものに疎い自分には、そのオドロオドロとした情景はいまいちぱっとしなかった。

『夜歩く』の舞台は、陸や山間である。
そのタイトルにあるとおり、この作品の『夜』に関しての描写は、なんとも溜息のでる出来である。
暗く深く、山や林に何かが潜むような恐怖――と同時に、自分自身の心にある疾しい部分が描く影を見事に描いている。
古くから権力を持っていた『古神家』で起こる、衝撃的な殺人事件――物語は、主人公である推理小説家・屋代寅太が、その友人で、古神家に代々仕える仙石家の長男・直記から受けた依頼から始まる。
人間の抱える闇を、これでもかと描くラストシーンやギミックは、ぞっとするものがある。

※以下ネタばれ付きの感想みたいなもの

読んだ人ならわかるとおり、この作品の肝は『殺人者が主役である』という点である。
読み進めていくと、いくつかのミスリードが湧き上がり、これに気を取られているとなおさらこの作品の深さに取りつかれることになる。
犯行のトリックが『殺害した死体の首を切り落とすことで死体の身元をわからなくする』という、作品内でも指摘されているような『推理小説ではありふれたトリック』であることが、最大の罠だった。
実は読者が読まされているのが、犯人が重要な部分を工作して書かれたノンフィクション小説である――終盤で明かされるこの事実によって犯人あてはさらに難しくなる。
いや、実際には犯人自体の予想にはたどりつけそうではあるが、読者にそれを読ませることで最後の自供の狂気性を倍々に盛り上げる手腕にはかなり驚いた
本という媒体を、うまく小説のギミックに取り入れていた作品は、自分の知る中では『敵は海賊 海賊版』があるが(当然お勧めの作品である)、殺人者が主役の本という非現実性は非常に気に入った。
だんだんと横溝先生の魅力に、取りつかれつつある気がする。
おすすめ。
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テーマ : 読書
ジャンル : 小説・文学

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