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Uの世界

神林長平先生作、SF虚構ファンタジー?
実にあらすじ詐欺なので初めて神林に触れる方、もしくは適当に手にとって読む方は注意だ!
(自分はあらすじとか見ないで読み始める派だが)

○あらすじ
19歳の優子は4年前のある日、祖父から奇妙なことを告げられた。
おまえは砂の中から生まれた、その身体は偽身だから真身を取りもどさなければならない、と。しかも真身は中央政府局の地下の聖室にあるという。家族から見捨てられ、不可思議なことを語り続ける老人は、やがてひとり寂しく死んでいった。そして祖父の死後、優子は真実を確かめるため中央放送局へと向かったが……おそるべき世界の真相を暴き出す連作短編集。





※以下ネタばれ含む雑記
〇ずばり言うと……

この物語にオチはない。
あらすじだけ見ると、優子を主役に恐るべき陰謀に立ち向かうSFサスペンスかのように見えるが、『Uの世界』には真相だとか明確なオチなど存在しない。
そもそも、優子の物語は連作のうちの一章で終焉し、二度とその存在は登場しない。
それも、そこそこのバッドエンドである。
しかし、だからといってこの作品が『駄作』なのかというと、もちろん『No!』である。
ただ、あらすじなどで期待した人にはがっかりするかもしれない、ということが問題だろう。


〇表紙の女性、その正体

自分が手元にあるのは、1998年に出版された文庫版である。
最初に単行本として発行されたのが1989年、雪風が1983年なので比較的初期の作品に分類されるらしい。文庫版の表紙は旧版ではシンプルなのだが、自分のバージョンでは赤ん坊を抱いた女性が描かれている。

この女性、文章中では『長い黒髪とサリーの女』として、登場する。
『Uの世界』では、複数の『ユウ』が登場し、様々な物語が展開するのだが、最終的には彼女が何かしらに導き、物語が終焉する、というのが基本だ。
この女性の明確な正体は、最後まで暴かれることはない。
ではこの女性は何なのだろうか。

最初の『ユウ』は『優子』である。
比較的普通の社会背景を持ち、優子自身もごく普通の――不感症などの描写はあるものの、そういった女性として描かれる。
彼女は突如、死んだ祖父から、世界全てが偽物で何者かに管理された世界だと知らされる。
自分の体は虚構で本体は別にある、本当の身体は男なのだ、と知らされ、優子は中央政府へと乗り込み、自分の体を取り出す。
――ここまでは問題ないのだが、実はその取り戻した体すらも虚構だと告げられる。
死にかけた優子の前に現れ、そう告げるのが『サリーの女』である。
サリーの女は、魂を抜き取ったかのように優子の意識を、自分の抱く赤ん坊へ導く。
優子は赤ん坊の目線で、死んだ優子の死体を見つめ、一章が終わる。

こういったことが、Uの世界では繰り返される。
基本的に、女性が『ユウ』を連れ去って終わるのだが、女性は連れ去るときに意味深な言葉を発する。
『おかえりなさい』である。
また、最初の『ユウ』に女は『その体は真身の影』であることを告げる。
物語の真相に一番近い存在のようだが、結局女性の正体は何なのだろうか?
・例えば『プリズム』のヴォズリーフのような存在
・生命子の話が出ていたから、『今宵、銀河を杯にして』のような野良AI
・大本は幻覚発生装置だし、『魂の駆動体』のようなもの


〇現実と非現実

今作で一番おもしろいのは、現実感の薄さである。
一章から、主人公の行動は無駄に終わり、それが次々と繰り返されていくストーリーは読み手にも無意味さ感を味わうことになる。
無感動と無意味の連続である。
なにより、今まで読んでいたストーリーが、次章の劇中劇に過ぎないなど、読み手にも主役を誰に絞ればいいのかを迷わせる。
結局、主役が存在しない話なのだが。

今作では、登場する人、舞台、現実、そのすべてに『虚構』や『幻』が絡んでくる。
『Uの世界』で描かれているものは、実は何もない、ともとれる。
『何もない』ことを描いた小説と考えると、納得がいくのだろうか。
非現実感を味わいたい方には、この一冊をお勧めする。
ただし、神林初心者にはお勧めしない。

お勧め度:★★☆☆☆
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テーマ : 読書
ジャンル : 小説・文学

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