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死して咲く花、実のある夢

神林長平先生の短編小説。

テーマは生と死だが、そこに情報と記憶などのテーマを絡めてくるところが実に神林先生流。
また、例に漏れず『猫』と『フムン』が登場。
フムンはたぶん一回、かしらんも一回。
先生の作品は結構終盤に飛ばして中途半端になりやすい気がするが、今作はけっこう綺麗に終わるので好印象。
ただ内容がまた小難しいので、SF初心者には絶対に薦められない。
点数で言うと75点。
(雪風が95点、グッドラックが98点)

以下、ネタばれ付き感想やらなんやら。
■死後の世界とエントロピー

物理に詳しくないのでおおざっぱな解釈になるのはごめんなさい。
今作は行方不明になった猫『オットー』を、『マタタビ装置』なるものを搭載した情報車『秋月』で捕獲しようと、降旗少尉・知念軍曹・大黒情報士が任務に就くお話。
しかし、オットーを追っていた彼らは、気づくとクジラが空を飛ぶゴミ山になった世界に立っていた。
降旗少尉はこれが死後の世界であると想像し、なんとか軍へ連絡する方法を模索し始める。
調べていく内に、これが死後の世界であるという確信が大きくなり、自分たちは死後の世界から生きた世界へと情報を持ち帰ることが目的の、軍の実験に巻き込まれたのだという考えに至る。
オットーは死んだ猫であり、彼の持つ情報を死後の世界から持ち帰る実験、ということだ。
死んだはずの死者との遭遇、降旗少尉の生まれた日の故郷の光景、オットーとの遭遇。
降旗少尉たちへのメッセンジャーとして殺された技術者の男との会合を得て、降旗は死後の世界というものに仮説を立てる。

死後の世界というのは、
大きな意識が発した情報を脳がキャッチし、個性が生まれ、死後にその情報を意識へと返すことの繰り返し。
もしくは、現実世界こそが仮想であり死への中間地点で、死とは夢が醒めて無へと至ることである。
といったものだった

降旗少尉は二つ目の仮説が真実であると考え、自分たちがいま無へと至れない状態にいる、と考える。
それは、オットーや軍の介入が原因でそうなっていると想定する。
現実の人間が死者に干渉するのは、許されることではない。
降旗は自分が、『納得して死ぬ』ために行動することを決意する。

ついには現実世界へと帰ってくるが、彼らが生きて世界へ戻れる時間には限りがあった。
選択を迫られる彼ら。
大黒は生きることを望み、降旗と別れる。
知念もまた、自分が死んでいるのか生きているのかを確かめるために生きた世界へと向かう。
そして降旗少尉は、軍のやり方に反旗し、完全な死を望み、そして……。

大黒は生きた世界へと復帰する。
知念も後を追って出てくるが、死体として現実世界へ戻ってしまう。
降旗少尉はすでに死んでいた。
生きて帰ってきた大黒だったが、自分の記憶と現実世界とが曖昧になっていることに気づきショックを受け、自殺を図ろうと……。

ずらっと簡単に書くだけでも小難しい話っぽくなっているけど、要するに成仏できるかどうかの話。
軍の目的が『死者から情報を引き出す通信手段の開発』であったために、死んだ人間が死ねなくなっている。
降旗少尉は自分をしっかりと死なせたことで現実世界が変化すると睨み、死を選び勝利する。
神林流の輪廻の話。


■降旗少尉の死

降旗少尉の意志の強さがこの戦いのキーだった。
物語の序盤から降旗の故郷が登場、終盤にも彼の祖父と祖母(の死後霊というか、死後の情報もしくは降旗自身の意思)と会うなど、彼の人生を振り返るような展開は、やっぱり走馬灯と同じ意味合いなんだろうか。
相変わらず神林作品の指揮官はタフネスだったが、彼のように完全に勝利した男は少ない。
死んだけど、それこそが勝利だったんだから。


■現実空間こそ仮想空間?

この作品では、現実とは死に至る中間に位置し、死を邪魔するような仮想空間であるとされている。
それを気付かせたのが、バーチャルリアリティを発生させるチャネリング・ヘッドという装置だった。
チャネリング・ヘッドに装備されたノイズキャンセラー、それによってカットされたノイズこそが、現実=仮想そのもの、というややこしい話。


■大黒は生還者なのか?

唯一無事で帰還した大黒だったが、彼が戻った世界はマタタビ装置も軍の計画も存在しなかった。
パニックになる彼は死んだはずの母親との再会で、混乱と安息を得る。
結果的に『自分の思っていることだけが真実』だというオチになるが、彼の世界が変容したことに変わりはないはず。
無事ではあるものの、『迷惑一番』の面々と同じように、完全な勝利者とは言い難い、のかも。

総評としては結構おススメ。
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