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赤い眼鏡



1995年夏。
人々は溶けかかったアスファルトの上におのが足跡を刻印しつつ歩いていた。
……ひどく暑い。



紅い眼鏡』は押井守監督による初の実写映画作品。
公開は1987年。
後にケルベロス・サーガとよばれる作品群の1作目である。

カルト的な人気をもつ本作を評価するのは難しい。とはいいながらも記事をはじめてしまった以上、一定の考えを披露しないことには始まらない。
こんな書き出しをさせるくらいには、本作は見るものを混乱させるであろう。
声優・千葉繁のプロモーションビデオからはじまり、規模が大きくなり映画となった本作は名作『機動警察パトレイバー』より2年も前の作品である。つまりまだうる星のにおいを引きずっている時代に作られた、しかもアニメでもない作品である。

ストーリーは第二次大戦でドイツが戦勝国となったイフの世界。
占領下となった日本に作られた警察組織の内乱から始まり、主人公・都々目紅一がドイツ製特殊装備であるプロテクトギアを持ち出し、仲間と共に国外へ逃亡を図る。
逃亡中に戦闘し、共犯者である鷲尾みどり、烏部蒼一郎らが負傷。
都々目紅一は、いつか日本へ帰ってくることを誓いヘリに乗り込む。
そして3年後、都々目紅一が帰国するところから始まる――。

現在、DVD以外にもバンダイチャンネル『紅い眼鏡』たったの350円で視聴可能である。
詳しい感想はネタバレになるので後述するが、興味を持った方はこちらでさくっと観てしまうのがいいかもしれない。
ただし、"本作はあの攻殻機動隊より人を選ぶし、声優に興味があるほうが(むしろ必須とも)楽しめる"ことを先に忠告しておく。

それでは以下はネタバレありの雑記。




本作を悩ませるのはその設定でも内容でもなく、その"無意味さ"にある。
実際に見た人ならわかるであろうが、本作は都々目紅一が見た死の直前の"走馬灯"――。
いや、それどころでもなく"夢想"とでもいうような虚無的な回想でしかないからである。
本作はすべて、日本へ帰ってきた都々目紅一が公安警察の室戸文明(玄田哲章)に追われ、殺害される刹那に見た妄想とも言うべき回想でしかない。
主人公であるはずの都々目紅一は実際には死んでおり、本来の物語はその映画そのものの裏で進行していることになる。
そしてその回想というのが、夢のようなものでありながら、一種都々目紅一の"理想"によって飾られているのが一層問題となってくる。
もしすべてが夢想ならば、本作の冒頭で展開する逃亡劇もすべてが嘘になるからであり、それは映画の中でその映画の存在意義すら完全に否定することになるからである。
また、主人公・都々目紅一が最初から不在であったのなら、この映画を見ている"わたし"という存在はどこに置けばいいのか……?

本作の最初から最後まで、ドイツ占領下となった都々目紅一の夢想する日本には、そこかしこに少女(兵頭まこ)がこちらを見つめているポスターが貼られている。
(ジョージ・オーウェルの1984に登場する"ビッグブラザー"的な)
おそらくこれがこの世界における"視聴者"であるのだろうとは予想できるが、それにしてもやはり気味の悪い感覚に陥る。

都々目紅一の行動は、終始"喜劇的"となっている。
それが死の間際の幻想と知れば、ああなるほどと合点がいくが、予告編を見た来場者はそれを見て何を思うだろうか。

プロテクトギアという力の象徴。彼の活躍を期待したひとほど拍子抜けする作品であるのは間違いない。
なにせ活躍といっても冒頭数分で終わるのだから。
とは言いつつも、都々目紅一を演じる千葉繁の喜劇っぷりを事前に心得ておくことで、本作はまさにかめばかむほど味がでるのであるが……。



つまりは予告から視聴者を裏切り、あまつさえ映画自体を本作は裏切っているのである。
展開されるのは一見すれば重厚なストーリーとは無縁だし、特撮を期待すれば冒頭で終わり。
主人公の都々目紅一はただの喜劇の登場人物でしかなく、すでに死んでいるので未来もなにもない。
ただ、"紅い眼鏡"という作品の中に起こった事実のみを観測しているだけの、……これは映画なのか? という問題になってくるのだ。
しかし、魅力がないわけでもないのが"紅い眼鏡"の悪癖なのだ。

冷静になってみれば、本作は声優のプロモーションビデオという当初の目的自体は達成しているのだろう。
登場する声優は豪華だし……知っていれば楽しめる場面も多い。
しかし表面上取り繕っている"映画"という皮に期待しすぎると、痛いしっぺ返しが来るのが紅い眼鏡なのだ。
もちろん押井的な要素は大量に盛り込まれているため、ジャンキーにはありがたい。

"紅い眼鏡"は警戒してみるべき作品と言えよう。
映画として期待するか、特撮として期待するか――それらは肩透かしを食らうはめになる。
ただ、画面の向こうにある出来事のひとつとして、気軽に見るのが正しい見方なのかもしれない。

赤い眼鏡

おまけとしてニンテンドーDSiウェア『絵心教室』で描いたプロテクトギア。
これも期待せずに見ていただきたい。
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