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魂の駆動体




Ladies and gentlemen.
Start your engine!


魂の駆動体』は神林長平の長編小説である。
1995年に刊行された本書は『』をテーマとしたSFとなっている。
なお、今回の感想は再読となる。

物語の主題となる『車』を、本書では『自動車』と『車』の二種類に分別して語られている。
それはすなわち、便利かつ安全な乗り物、完全自動操縦となった文字通りの『自動車』と、荒々しくガソリンを燃やし鼓動する『クルマ』である。

物語の舞台は現代の延長上にある未来となっている。
主人公である老人は、老人ホーム同然の施設で余生を過ごしている。日々の大きな生きがいもなく過ごす彼は、ある出来事から施設の友人である子安と共に、近くで林檎園を営む男から林檎を盗み出すゲームを始める。老いた身ながらも、このいたずらに心躍らせ、彼らは入念に計画を練って実行に移す。
見事、林檎園からもっとも高価なレイゴールドを盗み出した彼らだったが、主人公はその脱出劇の最中に見た、あるものに心奪われてしまう。
それは、かつて彼の父親がレストアした車と同じ車種、『ホンダ・プレリュード』の朽ちた姿であった。
いつしか彼は、自らの生きがいとして自分で車を設計することを夢見るのだが……。

あらすじはこのとおりだが、物語は後編で大きな転機を迎え、物語は第二部へと移ることになる。
劇的に変化するといってもいい物語展開だが、その中心にあるのは『魂を震えさせる機械』としての『クルマ』の姿、そのあり方だ。
神林長平作品で言えば、『戦闘妖精・雪風』の主人公である深井零は無機物たる戦闘機・雪風への偏執的な愛を抱いていたことが特に有名であるが、本作はその操縦者とクルマのあり方をさらに進んだ考察によって描いている。
自動機械であるクルマの進化が正しいのかどうか。それは同時に自動化する社会への畏怖をも込めた強烈な主張が込められている。
文明が便利に進化することと、心から望む機械の違い。クルマを操縦することで何を得ることができるのか。
神林長平作品に普遍的に語られる"無機物への愛"の境地が本作では完成されていると言ってもいいだろう。
もちろん神林らしいクルマへのマニアックな描写も味わい深い。

クルマ好きにはぜひとも本書を読んでいただきたい。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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