スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

幸運の25セント硬貨



『幸運の25セント硬貨』とは、ホラーの大御所スティーブン・キングの短編小説集である。
新潮社から発売された本書は、多彩な作品内容さながら、それぞれの章に別々の翻訳者がついており、複雑な色彩を帯びた魅力的な一冊となっている。

『なにもかもが究極的』――浅倉久志
『L・Tのペットに関する御高説』――風間賢二
『道路ウイルスは北にむかう』――白石朗
『ゴーサム・カフェで昼食を』――白石朗
『例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚』――池田真紀子
『一四〇八号室』――風間賢二
『幸運の25セント硬貨』――池田真紀子

スティーブン・キングを読むのは初めてだったので、本書の頭に来る『なにもかもが究極的』から次の『L・Tのペットに関する御高説』までの流れには些か頭を悩ませた。何せ"オチ"のようなものが存在しない話が最初に来られると、今後一切の作品に対して不安を感じずにはいられない。読み進めたところで真実にたどり着かない物語を読まされる、と分かっているのは辛いものがある。
幸い、その後の物語の数々は(見事とまでは言わないが幽霊話らしい)"オチ"が用意され、気味の悪い読後感を持って本書を閉じることができたが、そうなって初めて最初の二篇の味わい深さを垣間見た気がする。
なにもかもが究極的』――若者時代の言葉では例えようのない魅力的な高揚感を表現した、あまりに曖昧なその単語自体が、この物語が綱渡り的刹那の上に成り立っていることを表現しているような気がして、大変関心させられた。行き当たりばったり、重圧からの逃避、それらを成す大いなる成功の鍵――『なにもかもが究極的』なそれを何の疑いもなく手にする恐怖。無知な若者を吊り上げる狡猾な大人の醜さを描いている。
続く『L・Tのペットに関する御高説』もまた真相の見えぬまま終焉する短編なのだが、これは登場人物の語り口から漂う、不気味な雰囲気に取り込まれてしまった。最後まで事件そのものが起こったことさえ大っぴらには表現されない。事件の当事者が、自分の幸せだったころを語るだけで――その哀れな姿だけで、事件の恐ろしさを表現するのには十分だ。
幽霊物の『道路ウイルスは北にむかう』や、サイコなサスペンスを描いた『ゴーサム・カフェで昼食を』もまた魅力的な話だが、最初の二篇に比べれば直裁な表現の恐怖でしかない。もっとも、この二篇もまた身も凍るような恐怖の出来事を見事に描いているが。

全体を通して、スティーブン・キングという男の凄みを感じるには大変いい一冊だと感じた。
本書には一篇ごとに、最初にキング自身の解説を載せており、それを頭に入れることで物語への導入をスムーズにする役割を果たしている。これが初心者には大変ありがたかった。また読み返すことで、加えてこの解説が作品の深い部分までも理解する手助けをしてくれるだろう。

長編を読む時間や体力がなくとも、キングに触れてみたい方にはオススメできる一冊だ。
もしくは日常では出会えないサイコやホラーを求める現代人に。
スポンサーサイト

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

そくろ

Author:そくろ
ホームページはこちら


Powered by ついめ~じ

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。