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虐殺器官




虐殺器官』は伊藤計劃のSF小説である。
作者の伊藤計劃は、今作でデビューを飾り、期待の作家として注目を浴びた方ですが、長編わずか三作で肺がんにより他界。今作はようやっと文庫として登場しました。
SF小説ではありますが、ごく近代のイメージをふんだんに盛り込んだ作品で、一見すると現代小説のような錯覚を覚えます。現代起こっているテロやアメリカの問題を、これでもかと主題においてくるストーリーは、読み手にある種の恐怖を与えること請け合い。
主人公である米国の特殊部隊の隊員。彼の母の死を契機に描き出される内面描写は、主人公の未熟さ故か不安定なイメージを持つが、描写は丁寧で強い説得力を持つ。作者流のアメリカ感が多分に描写されているが、これをどう捉えるかは読み手にお任せしたい。
戦闘描写は迫力満点で、息を呑む展開が多い。読みやすく、書き方も丁寧である。
しかし、僕はどうしても残念な部分を感想に述べなければならない。これはあとがきにあった小松左京の評論と、ほぼ同じ感想だったからしり込みせずいえるのだが――名著と呼ばれる本書をたたくのは恐れ多いから――しかし、どうしても不満足な部分があるのは事実だ。
主人公の一応の敵役として登場するジョン・ポールは、世界中でその国の言語を操作し、のちに国内を混乱させるという手段で戦争を拡大させていくのだが、その方法があいまいなのがどうしても気になる。それが『虐殺器官』というタイトルにもなるほどの重要な要素であり、ネタバレになるが――オチに繋がる重要要素であるにもかかわらず、その言語操作の内容についての説明は、いまひとつ説得力に足らない。これはある意味、この作品がSFと呼ぶには現代寄りになりすぎで、かつ現代劇と呼ぶにはSF寄りすぎる世界観が足を引っ張っていると思われる。下手に現実的な作風に、『虐殺器官』というSFチックなシステムを刷り込んだことで、戦争や世界観に『おもちゃ感』が出てしまったのは、残念でならない。作者の死に相対する描写は、彼の容態が鮮明に現れているようで、よくできているのだが、戦争や国家間の争いのシステムに関してはフィクションと呼ぶにはいささか現代過ぎており、要するに作者の趣味的なイメージが拭えない。
しかし、本当に残念でならないのは、この次がないことだろう。伊藤計劃なる男が、これを踏み台にもっと深い何かを創造する時間が、もうないというのがもっとも残念なところだ。
『過負荷都市』は、どうしても読みたかった。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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