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パノラマ島綺譚




パノラマ島綺譚』は江戸川乱歩の小説である。
今回紹介するのは角川ホラー文庫から出版された『江戸川乱歩ベストセレクション』の6作目にあたり、表題である『パノラマ島綺譚』と、『石榴』の二作が収録されている。
以前、『孤島の鬼』の感想を書いたときにも申したが、僕は江戸川乱歩をそこまで知らない人間で、恥ずかしながらも名前を知ってはいるが作品自体を読んだことは少なく、故にこの二編の作品がファンの間、もしくはミステリーマニアからはどう評価をされているのかは存じないところだ。
この二編を収録した本作を手に取ったのも、単に大槻ケンヂの作詞に数多く登場する『パノラマ島』への興味が第一であった。

あとがきには、今まで乱歩作品を読んだことのない人へ向けたシリーズを意識したと書かれており、実際今回読んだ二編の物語は大変魅力的で、読みやすいものだと感じた。
僕のような、江戸川乱歩の魅力を知りたいという方ならば、十分に読むべき一冊と言えよう。


パノラマ島綺譚』は、表題にあるとおり、『パノラマ島』の風景描写や、島に踏み入った人たちの心理描写の細かさが抜群にいい。これは、あとがきでも触れられていたが、当時の読者には受け入れられなかったらしい。かなり濃い、現実とは思えない島の数々の景観。それらを乱歩も拘ったようで、ミステリーの部分も刺激的ではあるが、島へと踏み込むまでに推理的な要素はほぼ排他してしまっていて、読者はひたすらにパノラマ島に没頭させられる。ヒッチコックの、マクガフィンをあえて捨てた『北北西に進路を取れ』と同じようなものだろうか。
もちろん、そうやって排他されたミステリーの要素もよく出来ており、大変楽しめる作品である。

石榴』もまた、パノラマ島綺譚のように変則的な作品ではあるが、そちらよりは正統派なミステリー作品だ。
近年の『相棒』などを見ても思うのだが、優れたミステリーというのは犯罪者の心理、トリック、事件の狂気性などよりも、やはり重要なのはそれらを統合した上での『ドラマ性』というものではないか、と考えていて、この『石榴』もまた、犯罪の描写やトリックなども鮮やかながら、どれかひとつが劣るでもなく、きちっとまとまっていて素晴らしい一作だと思う。
トリック自体は、ある意味ではありきたりかもしれない。しかし、犯罪者の心理、探偵の内面、あっと驚く数奇な運命を、さも不自然ではないように描くこの作品の、というよりは乱歩の筆力には脱帽させられる。
内容自体は本当にシンプルなのだが、それにも増して不気味な、印象に残る作品だ。
ある意味では……作中に出てくる絵画学生なんてものは不必要であるにもかかわらず、どうして乱歩先生はこんな人物を出したのだろうと考えてしまう。ミスリードとしては弱く、かといって登場人物の誰にも影響を与えるでもないこの学生は、最後に本当のきちがいになってしまうのだから。
では彼は救われない哀れな人物として描かれたのか? それとも、もっと重要な意味を成しているのか?
ぜひ読んで考えていただきたい。本当に些細なことなのだが。
そこに乱歩先生の本当の狂気を見た気が、僕にはするのだ。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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