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あゝ、荒野




――憎しみひとつ習得できぬ

1960年代の日本。
新次と<バリカン>という二人の男が、同じ日に、同じボクシングジムへと入門した。
新次は快活な野心家で、<バリカン>は小心者の大男。
正反対の二人が都会という荒野の中で、さまざまな人と出会い生きていく。
やがて<バリカン>は新次と闘う日を夢見るのだが……。


あゝ、荒野』は寺山修司作の長編小説。
前もって言うと、僕は非常にレトリックを多用する作品が苦手である。なので非常にこの作品は感想を書くのに難儀した。
また、寺山修司という男をそこまで深くは知らない――恥かしながら僕の読書暦は深くはない。しかし恥じていても仕様がないので黙々と追いつこうとするだけだが――こともあって、なにぶん心構えに時間がかかった。
僕のレトリック嫌いの起源は、村上春樹の話へと遡る。村上春樹がこうして本を読む機会を自分に与えた。与えはしたが今はとても嫌いなのだ。村上春樹をだいぶ読み漁った当時、レトリックは気取った書き方だとなんとなく思ってからは、どうしても嫌悪感が出るようになったからで。

調べてみると、この『あゝ、荒野』は寺山修司の書いた唯一の小説だとのこと。
文体は前述したとおりレトリックを多用したもので、多種多様な人物が入り混じる群像劇という形。
多くの人が知っているとおり、寺山修司は本来は劇作家であり、劇というものが群像劇になりやすい(と個人的に思っているだけ)だけに、こういった作品に仕上がったのは当然なのだろう。

あとがきで彼は「モダンジャズのような構成の小説」と述べている。
オチを決めず、次々とシチュエーションを描いていき、自然とフィナーレへと向かう手法で描かれており、もちろんそ
ういう手法をとる作家は少なくはないと思うが、本書は非常にさまざまなものからの引用が多いのが特徴。
時代背景が色濃く出た歌詞や詩などが多く登場し、時代観というものが鮮麗に描かれている。

自分で書いたあらすじでは、情けないことに青春小説のような青臭いストーリーを想像するかもしれないが、『あゝ、荒野』は多くのテーマを内包している。
新次の生き方にあこがれる<バリカン>のモノローグは物悲しく、彼だけではなく出てくる人物の多くが何かしらのコンプレックスを描いており、ボクシングという種目と掛け合わされている。
ボクシングとはそもそも――というやや批判的観点からも切り込まれており、今日テレビで目にする格闘技の感覚ではない、当時のボクシング観というものもこの作品には宿っている。
言ってしまえば野生なのだろうか。

前述したとおりのレトリック嫌いの僕としても、この作品は読みやすくスラスラといけた。
何度も読みたい一冊、おすすめ。

※追記
嵐の松本潤さんと小出恵介さんで舞台化するそうですね。
しかも演出は蜷川幸雄だとか。期待できます。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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