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神林長平トリビュート

いろいろごちゃごちゃしてたら発売日忘れていたという。
ささっと買ってきてばばっっと読んだので雑記です。

神林長平トリビュート』は『新世代作家が神林長平に対峙する』をコンセプトに、八人の作家に神林作品のアンソロジーをそれぞれ書いてもらうという、30周年記念のスペシャル企画。
どんな本に仕上がっただろうと思ったらちゃんとしたハードカバー本でした。
序文では神林先生のお言葉が載っており、こちらも神林ファンには必見なもの。
参加した作家、および担当作品のリストがこちら。

狐と踊れ/桜坂 洋
七胴落とし/辻村深月
完璧な涙/仁木 稔
死して咲く花、実のある夢/円城 塔
魂の駆動体/森 深紅
敵は海賊/虚淵 玄
我語りて世界あり/元長柾木
言葉使い師/海猫沢めろん

これに加え、伊藤計劃の『過負荷都市』が予定されていたようです。
作品をまだ読んだことはないのですが、非常に興味のある方だっただけに残念です。
以下、一作ずつ感想をざっくりと。
(『我語りて世界あり』は未読、『言葉使い師』は内容がすっぽ抜けていたのでちょいとパスします、すみません)
●狐と踊れ/桜坂 洋

『狐と踊れ』は神林長平先生の初の短編集であり、神林長平のデビュー短編。
薬を飲まなければ胃が抜け出てしまうという、一見してコメディチックな設定ながらも薄っすらと漂う人間の性やら狂気やらを描いた傑作。(本ブログのタイトルもこの作品から拝借しています)
個人的に『狐と踊れ』は一冊一作品として、今読んでも非常に魅力的な作品。
神林トリビュートのトップバッターをこの作品が飾るのは、ある意味当然の流れだったのでは。
その内容は、『狐と踊れ』に内包された神林長平作品には欠かせない、脳天気さを前面に押し出した作品となっており、抜け出した胃が主役という破天荒な内容になっている。
しかしながら、胃が自己の存在価値を捜し求めるという内容には一理を見出し、脳天気さの中にも真実を求める一途な胃の活躍は、ある意味では神林作品にもあるパターン。
オチがあっさりしているものの、なんとまぁ楽しい作品になっている。
……意外にも、神林長平トークショーで話題になっていた『フムン』は(読んだ限りでは)この作品のみ、しかもとんでもない使い方をしている。


●七胴落とし/辻村深月

個人的に『七胴落とし』はあまり再読したくない作品に入る。
この作品では神林長平作品ではたびたび見られる反社会的で病的な、それこそ作品タイトルにある銘刀『七胴落とし』のような非常に危うい一面が、もっともドス黒く描かれている。それこそ青春時代特有の毒々しさをこれでもかと秀逸に描いているのだが、筆者個人はあまり自分の該当する時代が好きになれないし、共感もするからこそ触れたくない作品なのだ。
ややもすれば嫌いな作品とも言えるのだが、トリビュートでは非常にライトに仕上がっている。
子供のころにはできたこと――猫と会話すること、そしてそれができなくなることを、大人になった少女が回顧する。内容は大幅に違いながらも、テーマ的には『七胴落とし』であるに違いなく、猫好きの筆者としてもなかなか共感できる作品になっている。
(余談だがトリビュートの猫登場率はかなり高い)


●完璧な涙/仁木 稔

『完璧な涙』はSFマガジン2009年10月号『神林長平特集』でのエッセイで、唯一二人の作家にテーマとして挙げられた作品である。無機質無感動の主人公・本海宥現、過去と未来が入り混じる独特の世界観、宥現を慕うヒロイン・魔姫、そして彼らを時間を越えて追う完全報復兵器――さまざまな魅力的な要素の詰まった傑作であり、人気が高いのも頷ける。
トリビュートでは、本編では見られなかった魔姫寄りの視点で描かれた外伝のような作品となっており、忠実に『完璧な涙』の作品を継承した短編となっている。
本編でも印象的だった砂――分断される時間軸など、本編でわくわくさせられた要素が多様に取り込まれており、外伝作品としての読み応えが高い。
メカ描写はないものの、神林ニズムが詰まっているのは確かだ。


●死して咲く花、実のある夢/円城 塔

神林長平作品に脳天気とシリアスの側面がありながら、その中間に位置する作品ももちろん少なくない。『死して咲く花、実のある夢』はそういった作品のひとつで、個人的にとてもいい作品だという印象を持つ。
『宇宙探査機迷惑一番』のように、突如死んだ主人公たちは、その原因や死とは何か、今の自分たちがいったい何なのかを追求する、という内容。死に対して脳天気でありながら立ち向かい、時にシリアスに、時にノスタルジックになりながら行動し、彼らが至った結論へと素直に歩むラストは非常に感動させられた。
トリビュートでは、かなり難解な内容が進む。哲学的な視点で人間の生と死の関係を紐解こうと試みるのだが――ある一遍からこの作品が『死して咲く花、実のある夢』なのだということに気づかされる。
おそらくトリビュートではもっとも難解で、読み応えがある一作である。筆者も一読だけではどうしても理解できずにいる。再読する必要がある。


●魂の駆動体/森 深紅

『魂の駆動体』には独特の人気があると思う。この作品は非常に魅力的で、その魅力がうまく言えないのが悔しいところだ。神林作品の中でも『雪風』は独特のものだが、この『魂の駆動体』はもうひとつの独特な一作である。
二人の隠居したじいさん達が、クルマが文字通りのコンピュータ制御になった『自動車』ではなく、真に『クルマ』を作るという、創造の物語。前半と後半で内容ががらりと変化しながらも、その両面で紡がれる『創造』すること、そして『クルマ』であること、少しずつ発展していく登場人物たちに読者は深い愛を感じると思われる。
トリビュートではこの作品の骨組みを理解しつつ、ショートストーリーのように組みなおされたような作品になっている。作品内容が実にじじいであり、クルマであり、ノスタルジーに包まれている。
原作になかった点といえば、次世代の存在だろうか。記憶が確かなら原作ではあまり次の世代は意識されずに終わったようだったが、今作はクルマは引き継がれていく。


●敵は海賊/虚淵 玄

『敵は海賊』は神林長平の代表作長編シリーズである。
前述した短編集『狐と踊れ』に一作目を収録し、以後『海賊版』から最新作『短篇版』へと、8作品も出版されている人気作である。
SFアクション、哲学、ファンタジー、あらゆる要素を取り込んだ怪物作品であり、魅力的な登場人物の数々など、『ライトノベル的』な人気も高い。
そんな宇宙の大海の如く――もしくはアプロの胃袋のごとく広い作品世界に挑んだのが虚淵玄というのが面白いところ。
内容はまさに『ある人物の誕生』であり、いままで作品で断片的に語られていたエピソードを具現化した作品になっている。

数々の作品、数々の作家と、神林ファンには夢の企画の一冊。
バラエティーが富んでおり、神林作品への挑戦――または愛にあふれたトリビュートとなっている。
直接的な先生の新作ではもちろんないが、断片的に感じる神林ニズムにニヤリとできる、そんな作品。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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