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神林長平新作・『敵は海賊・海賊の敵』



敵は海賊・海賊の敵



ラテルが空気の予感!!!


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いま集合的無意識を、




人類は意識しようとしている。
でもそれはぼくの意識ではないし、ぼくの無意識でもない。
まだ、いまのところは。



いま集合的無意識を、』は神林長平の短編集である。
表題となっている、近年発表された『いま集合的無意識を、』やOVA戦闘妖精・雪風に収録されていた短編『ぼくの、マシン』など小粒の作品が収録されている。

一見すれば、単行本未収録の作品の寄せ集めともみられがちな一冊だが、通して読んでみると不思議と表題に合ったテーマの作品が揃っているなというのが印象的。
二作目『切り落とし』以外はすべて2000年以降の執筆作品となっており、それらがすべて人間の無意識に関する物語が中心となっているところからすると、現在の神林長平のブームは、そういうことなのかもしれない。
これらの作品を経た上で、おそらく『アンブロークンアロー』という作品が生まれたのであろうと予想できる。

それもいい作品が揃っているが、何より注目すべきは311震災後に書かれた『いま集合的無意識を、』であろう。
直接的な被災した、しないにかかわらず神林長平がこの地震で何を思ったのかが色濃く出ており、これほど作者の心情を赤裸々に語っている(かのように思える)作品は、今までの神林作品でも例がない。
故・伊藤計劃に寄せた言葉という側面ももっており、伊藤計劃の作品を読んだひとなどにもおすすめできる。
神林ファン的には、『さえずり』に関する部分が非常に話題になったのも記憶に新しい。

自・我・像』は非人間を中心として人間の意識集合体、もしくはネットワークの本質を追求した作品となっている。
これのおもしろいところは、神林長平の創作観のようなものが描かれている点であろう。
また、本音フィルタという考えが非常におもしろい。
本書の作品には、神林長平が発達したネットワーク(現実での話)をどうとらえているかが描かれたものが多い。
その中でもこの本音フィルタというのは、なるほどと思わされた。

大作とはいわないものの、神林長平の近年の脳内の様子を取り出したかのような作品が揃っている。
雪風目当てではもったいない、珠玉の短編集といえるであろう。
特に311経験後の神林読者なら尚更必要な一冊だ。

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

言壷




私を生んだのは姉だった。

『言壷』は神林長平の短編連作である。
1994年に刊行された本書は、作者にはおなじみの早川からではなく、中央公論社からの出版となっている。
また、本書は第16回日本SF大賞受賞作である。

使用者の著述能力を支援する、ワープロを進化させたかのような機械『ワーカム』。
舞台となる世界では、このワーカムがなくては社会機能が成り立たないほどに浸透していた。
それぞれパーソナルな利用をされたワーカムは、使用者の著述の癖や、言葉の背景にある要素をも取り込み成長し、さらにそれぞれのワーカムともリンクし、膨大な言葉の世界を形成している。
使用者を最大能力で支援するワーカムであったが、言葉の能力を機械の力で統制しようとするその力は、ある意味では大変危険な存在である。人類は言葉による第二の現実と共に歩んでいる生き物であったから、言葉を制御されることはつまり人類を制御されるのと同義であった。
しかし、ある小説家が打ち込んだ曖昧な一文が、その秩序を崩壊させることとなる……。

神林小説において、重要なテーマのひとつが『言葉』である。本書はまさに神林流・言語を追求した珠玉の作品郡と言えよう。
常々、氏の作品では言葉が現実を変容させる力を持つと主張しており、この言壷においてはデジタル・アナログ両面でも言葉は強靭な力を発揮する。全編通して、ワーカムによって変容した世界の未来~現代の物語を描くことで、神林長平は強力な主張を完成させた。
また、言語の力は最新作『アンブロークンアロー』においても発揮されている。本書を読むことで神林流言語の世界観はさらに深まるだろう。

本作は、加えて神林長平の創作論といえるようなものの匂いを感じる部分がある。
言葉の使い方の説明、その破壊力など、これは氏が常々意識しているのではと思わせる部分が多々ある。

まさに神林長平の言葉、その要素が詰まった傑作と言えよう。

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

魂の駆動体




Ladies and gentlemen.
Start your engine!


魂の駆動体』は神林長平の長編小説である。
1995年に刊行された本書は『』をテーマとしたSFとなっている。
なお、今回の感想は再読となる。

物語の主題となる『車』を、本書では『自動車』と『車』の二種類に分別して語られている。
それはすなわち、便利かつ安全な乗り物、完全自動操縦となった文字通りの『自動車』と、荒々しくガソリンを燃やし鼓動する『クルマ』である。

物語の舞台は現代の延長上にある未来となっている。
主人公である老人は、老人ホーム同然の施設で余生を過ごしている。日々の大きな生きがいもなく過ごす彼は、ある出来事から施設の友人である子安と共に、近くで林檎園を営む男から林檎を盗み出すゲームを始める。老いた身ながらも、このいたずらに心躍らせ、彼らは入念に計画を練って実行に移す。
見事、林檎園からもっとも高価なレイゴールドを盗み出した彼らだったが、主人公はその脱出劇の最中に見た、あるものに心奪われてしまう。
それは、かつて彼の父親がレストアした車と同じ車種、『ホンダ・プレリュード』の朽ちた姿であった。
いつしか彼は、自らの生きがいとして自分で車を設計することを夢見るのだが……。

あらすじはこのとおりだが、物語は後編で大きな転機を迎え、物語は第二部へと移ることになる。
劇的に変化するといってもいい物語展開だが、その中心にあるのは『魂を震えさせる機械』としての『クルマ』の姿、そのあり方だ。
神林長平作品で言えば、『戦闘妖精・雪風』の主人公である深井零は無機物たる戦闘機・雪風への偏執的な愛を抱いていたことが特に有名であるが、本作はその操縦者とクルマのあり方をさらに進んだ考察によって描いている。
自動機械であるクルマの進化が正しいのかどうか。それは同時に自動化する社会への畏怖をも込めた強烈な主張が込められている。
文明が便利に進化することと、心から望む機械の違い。クルマを操縦することで何を得ることができるのか。
神林長平作品に普遍的に語られる"無機物への愛"の境地が本作では完成されていると言ってもいいだろう。
もちろん神林らしいクルマへのマニアックな描写も味わい深い。

クルマ好きにはぜひとも本書を読んでいただきたい。

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

今宵、銀河を杯にして




飲んではハイに 醒めては灰に

飲もうぜ 今宵 銀河を杯にして


今宵、銀河を杯にして』は神林長平の長編小説である。
長き戦争が続く惑星ドーピア。地球からやってきた若き将校、カレブ・シャーマン少尉は、自分の論文を実証するためにこの戦争に参加する。ドーピアで待っていたのは、地球では教えられなかった、ドーピア戦争のめちゃくちゃな現実。
飲んだ暮れの部下であるアムジ・アイラとクアッシュ・ミンゴ。
そして、彼らが乗ることになる戦車、『マヘル-シャラル-ハシ-バズ』であった。

再読作品になります。
ドーピアを襲う謎の異星人・バシアン。
ドーピアに最初に降り立った地球人――絶滅したオーソリアンの残したアンドロイドのオーソロイドと、彼らの作ったアンドロイドのドールロイド。
ドールロイドの反乱者のドールロイドゲリラに、人間を襲う謎の死神アコマディアン……。

とにかく滅茶苦茶な惑星ドーピアの現実に立ち向かうカレブ少尉の葛藤が面白い作品である。その滅茶苦茶な物語の中心に位置するのが、主役戦車のマヘル-シャラル-ハシ-バズ。このアホのように長い名前、その名づけ親である操縦士のアムジ、火気担当で大柄な小心者のミンゴなど等、魅力的な登場人物のドタバタが繰り広げられる。
所謂、『脳天気系神林作品』に分類される本作だが、その根底は代表作である『戦闘妖精・雪風』を彷彿とさせるものがあり、この作品は『脳天気系雪風』と言ってもいい。詰め込まれた要素は多大であり、神林作品には度々登場する酒や、後の『敵は海賊・A級の敵』に通じる要素が登場するなど、神林ファンとしては見逃せないシーンが多い。
テーマとしては『生命場理論』というものなのだが、あまり深く物語に絡まないため、若干オチが唐突なものになってしまうのが残念ではあるが、ドタバタっぷりにかけては大変濃い。キャラクターに味がある作品なのは間違いない。特にアムジとミンゴの二人漫才は魅力的で、タイトルにある通りの酒飲み道楽。酒と女、そして戦争――ドーピア人というものがいるのなら、彼らがそうなのだろう。彼らに頭を悩ませるカレブ少尉も、「私は天才だ」などと考える青二才で、実際部下二人より年下であり、二人に心配され、カレブも彼らを頼る。結局は似たもの同士なのだ。おすすめ。

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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